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自作NASの決定版!『Orange Pi 5 Max』のNVMeと2.5GbEが凄すぎる件

草壁シトヒ
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シングルボードコンピュータ(SBC)の世界は、教育やホビー用途から、今やサーバークラスの性能を持つ強力なマシンへと進化を遂げました。私がこの進化の最前線で出会ったのが、Shenzhen Xunlong Software社の『Orange Pi 5 Max』です。このボードは、特に自作NASやホームサーバーを構築したいと考えているユーザーにとって、まさに決定版と言えるスペックを秘めています。

この記事では、私が実際に触れて感じたOrange Pi 5 Maxの驚異的な性能、特に自作NASの常識を覆すNVMe SSDの速度と2.5GbEの高速ネットワークについて、その実力を徹底的に解説します。性能を最大限に引き出すためのポイントから、導入する上での注意点まで、余すところなくお伝えします。

Orange Pi 5 Maxとは?|常識を覆す超スペックSBC

Orange Pi 5 Maxは、単なるRaspberry Piの代替品ではありません。性能を最優先に考え、最新技術を惜しみなく投入した、プロシューマーや上級ホビイスト向けのモンスターマシンです。その心臓部とI/O性能を見れば、このボードがどれほど特別な存在であるかがわかります。

心臓部はサーバー級|Rockchip RK3588 SoC

このボードの性能の源は、8nmプロセスで製造されたRockchip RK3588 SoCにあります。このチップは、性能と電力効率を両立させるための先進的なアーキテクチャを採用しています。

圧倒的な処理能力を持つ8コアCPU

RK3588は、高性能なCortex-A76コアを4つ、高効率なCortex-A55コアを4つ組み合わせたbig.LITTLE構成の8コアCPUを搭載しています。これにより、ファイルサーバーや複数のアプリケーションを同時に動かすような高負荷なタスクは高性能コアが担当し、待機時などの低負荷な状態では高効率コアが消費電力を抑えます。まさに、24時間稼働させる自作NASにうってつけの設計です。

AI処理を加速するNPU

さらに、最大6TOPSの演算能力を持つNPU(Neural Processing Unit)を内蔵しています。これは、AI関連の処理をCPUに代わって高速に実行する専用プロセッサです。将来的にAIを活用したメディアサーバーの構築などを考えた場合、このNPUの存在が大きなアドバンテージとなります。

自作NASの常識を覆すI/O性能

プロセッサが強力でも、データの通り道であるI/Oが遅ければ性能は頭打ちになります。Orange Pi 5 Maxは、その点を完全にクリアしています。高速なLPDDR5メモリを最大16GB搭載できるだけでなく、ストレージとネットワーク性能において他のSBCを圧倒します。

PCIe 3.0 x4接続のNVMeスロット

私がこのボードで最も衝撃を受けたのが、PCIe 3.0 x4接続のM.2スロットを標準で搭載している点です。これにより、2280サイズのNVMe SSDを直接接続し、その性能を最大限に引き出します。Raspberry Pi 5がHAT(拡張ボード)経由でPCIe 2.0 x1接続なのに比べ、Orange Pi 5 Maxは理論値で数倍の帯域幅を持ちます。この差が、OSの起動、アプリケーションの応答性、そして何よりNASとしてのファイル転送速度に決定的な違いを生み出します。

高速ネットワーク|2.5GbEとWi-Fi 6E

ネットワーク機能も妥協がありません。標準的な1GbEを大きく超える2.5GbEの有線LANポートを搭載しています。これにより、大容量の動画ファイルやバックアップデータをストレスなく転送できます。無線機能も最新規格のWi-Fi 6Eに対応しており、有線LANを引けない場所でも高速な通信環境を構築します。

実力検証|ベンチマークで見るOrange Pi 5 Maxの性能

スペックシート上の数値が、実際の使用感にどう結びつくのか。ここでは、具体的なベンチマーク結果を基に、Orange Pi 5 Maxの真の実力を明らかにします。データは、このボードが単なるホビー用具ではなく、実用的なサーバーとして十分通用する力を持っていることを証明しています。

CPU性能|マルチコアの力が光る

CPUのベンチマークテストでは、Orange Pi 5 Maxの強力なマルチコア性能が際立ちます。Geekbench 6のスコアを見ると、OSの最適化度合いによって変動はあるものの、マルチコア性能ではRaspberry Pi 5を約20%上回る結果を示します。

これは、Linuxカーネルのビルドのような重いコンパイル作業や、複数のDockerコンテナを同時に動かすようなサーバー用途で、直接的なパフォーマンスの向上として体感できます。シングルコア性能ではわずかに譲るものの、NASやサーバーのように多くの処理を並行して行う場面では、このマルチコア性能が絶大な力を発揮します。

ストレージ性能|NVMeが異次元の速さを実現

私が自作NASにOrange Pi 5 Maxを推す最大の理由が、このストレージ性能です。PCIe 3.0 x4接続のNVMe SSDを搭載した際の実測値は、驚くべき結果を叩き出しました。

ストレージ種類シーケンシャル書き込み速度(実測値)
NVMe SSD (PCIe 3.0 x4)約2300MB/s
eMMCモジュール約300MB/s
高速MicroSDカード約60MB/s

表を見れば一目瞭然です。NVMe SSDの速度は、eMMCやMicroSDカードとは比較になりません。この毎秒2ギガバイトを超える転送速度は、大容量ファイルのコピー時間を劇的に短縮し、システム全体の応答性を別次元へと引き上げます。まさに、デスクトップPCや市販の高性能NASに匹敵する、あるいはそれ以上の体験です。

ネットワーク性能と消費電力

高速なストレージ性能を活かすには、高速なネットワークが不可欠です。2.5GbEポートは、iperf3によるスループットテストで約2.3Gbpsを記録し、その性能をほぼ最大限に引き出せることが確認されています。

一方で、これだけの性能を持ちながら、消費電力は驚くほど低く抑えられています。アイドル時の消費電力は約1.4Wから2W程度です。CPUに最大の負荷をかけた状態でも11W前後と、常時稼働させるサーバーとして非常に経済的です。ただし、高負荷時にはCPU温度が上昇するため、性能を安定して引き出すためにはヒートシンクとファンの導入を強く推奨します。

Orange Pi 5 Maxのメリット・デメリット

どんなに優れた製品にも、長所と短所があります。ここでは、私が実際に使って感じたOrange Pi 5 Maxのメリットと、導入前に知っておくべきデメリットを包み隠さず解説します。このボードがあなたにとって最適な選択肢かどうか、見極めるための参考にしてください。

メリット|圧倒的なコストパフォーマンスと拡張性

このボードの最大の魅力は、その価格からは信じられないほどの高い性能と機能性にあります。

RAWパワーと標準搭載の高速I/O

Orange Pi 5 Maxは、Raspberry Pi 5にNVMe拡張ボードなどを追加購入した場合のコストと比較すると、はるかに高い性能と機能をより安価に手に入れます。2.5GbEポート、Wi-Fi 6E、そして何よりPCIe 3.0 x4のM.2スロットが追加投資なしで利用できる点は、圧倒的なアドバンテージです。同等の性能を持つx86ベースのミニPCと比較しても、そのコストパフォーマンスは際立っています。

多様な用途への適性

その高い性能は、自作NASだけに留まりません。強力なGPUとCPUを活かしたレトロゲームのエミュレーションマシン、NPUを使ったAI開発プラットフォーム、あるいは低消費電力なLinuxデスクトップPCとして、一台で何役もこなせる万能性を持っています。プロジェクトの可能性を広げてくれる、まさに夢のあるボードです。

デメリット|ソフトウェアとサポート体制の課題

強力なハードウェアを持つ一方で、ソフトウェア面ではユーザーのスキルが求められる場面があります。

ソフトウェアの成熟度

公式から提供されるOSイメージは複数ありますが、その品質は発展途上な面もあります。最高のパフォーマンスを引き出すためには、コミュニティが開発しているOSビルド(例えばArmbianやJoshua Riek氏のUbuntuビルド)の導入を検討する必要があります。特にWi-FiやGPUのドライバは、OSによって安定性が異なるため、情報収集と試行錯誤が求められます。

初心者には高いハードル

Raspberry Piのように、膨大で整備された公式ドキュメントや、初心者向けの親切なチュートリアルが揃っているわけではありません。問題が発生した際には、コミュニティフォーラムやGitHubの情報を頼りに、自分で解決策を見つけ出す姿勢が必要です。トラブルシューティングそのものを楽しめるような、中上級者向けの製品と言えるでしょう。

まとめ|Orange Pi 5 Maxはこんな人におすすめ

Orange Pi 5 Maxは、間違いなく「パワーを求めるユーザーのための掘り出し物」です。クラスをリードするハードウェア性能を驚異的な価格で提供する一方で、そのポテンシャルを最大限に引き出すにはユーザー自身の知識とスキルが求められます。

私がこのボードを心からおすすめするのは、次のような方です。

  • とにかく高性能な自作NASやホームサーバーを構築したい方
  • Linuxの知識があり、トラブルシューティングを楽しめる方
  • コストパフォーマンスを何よりも重視する方
  • SBCの限界に挑戦し、自分だけのマシンを作り上げたい方

逆に、SBC初心者の方や、「ただ動けば良い」という手軽さを求める方には、Raspberry Pi 5や他の選択肢の方が向いているかもしれません。

Orange Pi 5 Maxは、SBCとx86ミニPCの境界線を曖昧にする、新しいカテゴリの製品です。その性能は、あなたの自作プロジェクトを間違いなく次のレベルへと引き上げてくれます。このモンスターマシンの真価を引き出し、あなただけの最高のサーバーを構築してみてください。

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