Raspberry Pi

ラズベリーパイとロボットキットで作る!AIカメラ搭載の探査車プロジェクト

草壁シトヒ
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ラズベリーパイを使った電子工作の中でも、特に胸が躍るのはロボット製作ではないでしょうか。モーターを回して走らせるだけでも楽しいものですが、AIカメラを搭載すれば、あなたのロボットは「目」を持ち、自分で考えて動くインテリジェントな探査車へと進化します。

この記事では、私が実際に取り組んだ、ラズベリーパイと市販のロボットキットを組み合わせたAIカメラ搭載探査車の製作プロジェクトについて、その魅力と具体的な手順を余すことなく解説します。プログラミングや電子工作が初めての方でも、この記事を読めば、自分だけの探査車を作り上げるための第一歩を踏み出せるはずです。

AIカメラ搭載探査車で広がる可能性

AIカメラを搭載した探査車は、単に遠隔操作で動くだけのロボットとは一線を画します。それは、ロボット自身が周囲の状況を「見て」判断し、自律的に行動する能力を持つことを意味します。この「目」を手に入れることで、これまでのロボット工作の常識を超える、新しい可能性の扉が開かれます。

「見る」能力がもたらすインテリジェンス

私が製作した探査車は、AIカメラを通じて世界を認識します。例えば、床に引かれた線をたどって自動で走行したり、特定の色や形の物体を見つけてその前に停止したりできます。これは、カメラからの映像をラズベリーパイがリアルタイムで処理し、「これは線である」「これは目標物である」と判断しているからです。

この技術を応用すれば、自動で荷物を運ぶ搬送ロボットや、侵入者を検知して知らせる監視ロボットなど、より高度で実用的なロボットを開発することも夢ではありません。プログラミング次第で、探査車の賢さは無限に引き出せます。

市販キット活用で初心者でも安心

「AI」や「ロボット製作」と聞くと、非常に専門的で難しいイメージを持つかもしれません。しかし、心配は無用です。現在では、初心者でも簡単にロボットの土台を組み立てられる優れた市販キットが数多く存在します。

これらのキットには、ロボットの車体(シャーシ)やモーター、タイヤといった基本的な部品がすべて含まれており、説明書通りに組み立てるだけで、しっかりとした探査車のベースが完成します。私がこのプロジェクトでキットを利用した最大の理由は、面倒な部品選定や加工の手間を省き、最も面白くて重要な「AIカメラとプログラミング」の部分に集中するためです。

プロジェクトの心臓部!準備するものを徹底解説

魅力的なAI探査車を作るためには、適切な部品(ハードウェア)と、それに命を吹き込むプログラム(ソフトウェア)の準備が不可欠です。私が今回のプロジェクトで実際に使用したものをベースに、必要なものを一つずつ詳しく紹介します。

ハードウェア編|ロボットの身体を作る

探査車の物理的な身体を構成する部品たちです。これらがなければ始まりません。

主役の頭脳|ラズベリーパイ本体

このプロジェクトの頭脳となるのが、小型コンピュータ「ラズベリーパイ」です。様々なモデルがありますが、AIによる画像処理にはある程度の計算能力が求められるため、「Raspberry Pi 4 Model B」以上のモデルを推奨します。メモリは4GB以上あると、より複雑な処理にも余裕を持って対応できます。

モデル名推奨用途特徴
Raspberry Pi 5高度なAI処理最新・最速モデル。最高のパフォーマンスを求める場合に最適。
Raspberry Pi 4 Model Bバランスの取れた性能AI画像処理にも十分な性能を持ち、入手性も良い。
Raspberry Pi 3 Model B+基本的なロボット制御AI処理にはやや非力ですが、簡単な制御ならこなせる。

探査車の足|ロボットキット(シャーシとモーター)

探査車の土台となるシャーシ、動力源のDCモーター、そしてタイヤがセットになったロボットカーキットを利用します。2輪駆動や4輪駆動など様々な種類がありますが、最初は部品点数が少なく組み立てやすい2輪駆動のキットが良いでしょう。私が選んだキットも、シンプルな構造で改造しやすかった点が決め手でした。

探査車の目|カメラモジュール

探査車が「見る」ために不可欠なのがカメラです。ラズベリーパイ専用に設計された「Raspberry Pi Camera Module」を使うのが最も簡単で確実です。高画質な公式カメラモジュール3は、オートフォーカス機能も搭載しており、より鮮明な映像で物体認識の精度を高めてくれます。

動力源と制御|モータードライバーとバッテリー

ラズベリーパイの電力ではモーターを直接動かすことはできません。そのため、モーターを制御するための専用電子回路「モータードライバー」が必須です。「L298N」や「TB6612FNG」といったモジュールが一般的で、安価に入手できます。

電源については、ラズベリーパイ用とモーター用にそれぞれ別のバッテリーを用意することが安定動作の秘訣です。ラズベリーパイにはモバイルバッテリーを、モーターには単三電池4本(6V)やLiPoバッテリーなどを使用します。

ソフトウェア編|ロボットに魂を吹き込む

ハードウェアを組み立てただけでは、探査車はただの模型です。ソフトウェアを準備し、プログラムを書き込むことで、初めて知的な生命が宿ります。

基本のOS|Raspberry Pi OS

ラズベリーパイを動かすための基本ソフトウェア(OS)です。特にこだわりがなければ、公式に提供されている「Raspberry Pi OS」で十分です。プログラミングに必要なツールもあらかじめインストールされており、初心者でも扱いやすいのが特徴です。

制御の言語|Pythonと必須ライブラリ

プログラミング言語は、シンプルでライブラリが豊富な「Python」を使用します。AIの画像処理には、専門的なライブラリの力が欠かせません。

  • OpenCV|画像や動画を処理するための定番ライブラリ。「AIの目」の核となる技術で、これを使えば画像の中から特定の色や形を見つけ出すプログラムを組めます。
  • RPi.GPIO / GPIO Zero|ラズベリーパイのGPIOピンを制御し、モータードライバーへ指令を送るために使用します。

いざ実践!探査車製作の3ステップ

必要なものが揃ったら、いよいよ製作開始です。私が実践した手順を3つのステップに分けて解説します。焦らず一つずつ丁寧に進めることが成功への鍵です。

ステップ1|探査車の骨格を組み立てる

ロボットキットの説明書に従って、シャーシ、モーター、タイヤを組み立てます。この段階で、ラズベリーパイ、カメラモジュール、モータードライバー、バッテリーケースなどをどこに配置するか、大まかなレイアウトも決めておきましょう。部品同士が干渉せず、配線がしやすいように配置するのがポイントです。

部品の固定には、ネジやスペーサー、両面テープなどを活用します。特にラズベリーパイなどの精密機器は、シャーシに直接触れないようにスペーサーで浮かせて固定すると安全です。

ステップ2|ラズベリーパイの環境を整える

探査車の身体が組み上がったら、次は頭脳のセットアップです。Raspberry Pi OSをmicroSDカードに書き込み、ラズベリーパイを起動します。初期設定を済ませたら、Wi-Fiに接続し、ターミナルから以下のコマンドを実行して、AIカメラに必要なOpenCVなどのライブラリをインストールします。

Bash
sudo apt update
sudo apt upgrade
pip install opencv-python
pip install RPi.GPIO

この準備が、後のプログラミングをスムーズに進めるための土台となります。

ステップ3|AIの目をプログラミングする

いよいよ、このプロジェクトで最もエキサイティングなプログラミングの工程です。Pythonを使って、カメラからの映像を処理し、モーターを制御するコードを書いていきます。

基本的な動作原理

プログラムの基本的な流れは以下のようになります。

  1. カメラで映像を1フレーム取得する。
  2. 取得した画像をOpenCVで処理し、目標物(例|赤いボール)が映っているか探す。
  3. 目標物の位置を特定する(画面の右か、左か、中央か)。
  4. 目標物の位置に応じて、モーターの動き(前進、右旋回、左旋回、停止)を決定し、モータードライバーに指令を送る。
  5. 上記1~4を高速で繰り返す。

この繰り返しによって、探査車はまるで自分の意思で赤いボールを追いかけているかのように動きます。

コードの実装例

私が書いたコードの一部を簡略化して紹介します。これは、カメラ映像の中から特定の色の範囲を検出し、その物体の方向に向かって旋回する処理のイメージです。

Python
import cv2
import numpy as np
# GPIOライブラリもインポート

# カメラの初期化
camera = cv2.VideoCapture(0)

while True:
    # 映像を1フレーム取得
    ret, frame = camera.read()

    # 色空間をHSVに変換
    hsv = cv2.cvtColor(frame, cv2.COLOR_BGR2HSV)

    # 検出したい色の範囲を指定(例:赤色)
    lower_red = np.array([0, 120, 70])
    upper_red = np.array([10, 255, 255])
    
    # マスクを作成して特定の色を抽出
    mask = cv2.inRange(hsv, lower_red, upper_red)

    # マスクから輪郭を検出
    contours, _ = cv2.findContours(mask, cv2.RETR_TREE, cv2.CHAIN_APPROX_SIMPLE)

    if len(contours) > 0:
        # 最大の輪郭(目標物)を取得
        c = max(contours, key=cv2.contourArea)
        # 目標物の中心座標を計算
        # 中心座標が画面の右にあれば右旋回、左にあれば左旋回
        # ...モーター制御のコード...
    else:
        # 目標物が見つからなければ停止
        # ...モーター制御のコード...

このコードをベースに、さらに細かい動きや条件分岐を追加していくことで、探査車の動きはどんどん洗練されていきます。

まとめ

今回は、ラズベリーパイとロボットキット、そしてAIカメラを組み合わせたインテリジェントな探査車の製作プロジェクトを紹介しました。市販のキットを活用し、一つ一つのステップを着実に進めることで、初心者の方でも必ず自分だけの探査車を完成させることができます。

AIの「目」を持ったロボットが、自分の書いたプログラムで自律的に動く姿を見た時の感動は、何物にも代えがたいものがあります。この記事が、あなたの新たな挑戦のきっかけとなれば、これほど嬉しいことはありません。さあ、あなたも創造力あふれるロボット製作の世界へ、一歩踏み出してみましょう。

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